阿佐ヶ谷住宅の奇跡

2014.01.16

東京メトロ「丸の内線」の南阿佐ヶ谷駅から南へ細く曲がりくねった小路を善福寺川へ向かって下っていくと、突然目の前の視界が開ける。
そこが阿佐ヶ谷住宅。
1958年、日本住宅公団(現在の都市再生機構)が建設した350世帯の分譲住宅団地。いわゆる団地である。
しかし、そんじょそこらの団地ではない。
テラスハウスは、前川國男の標準設計。
そして、マスタープランは、レーモンド設計事務所から住宅公団へ移籍したばかりの若きプランナー津端修一によるもの。
緩やかなカーブの周回道路の両脇にテラスハウスを点在させながら、その住棟に囲まれたコモンと名付けた小さな中庭が効果的に配置されている。
僕は、毎日、阿佐ヶ谷住宅の周回道路を歩いて駅まで通っている。わざと遠回りして。
阿佐ヶ谷住宅の魅力は、そこを訪れた人を必ずや虜にする。
春 善福寺川沿いの桜道を借景に、赤いテラスハウスを眺めて散歩した。
夏 生い茂る雑草を刈った後の、ムンムンする匂いの艶かしさにめまいがした。
秋 遠くの満月と虫たちの声に、思わずため息ついた。
冬 中央広場に積もった雪で子供たちが遊ぶ光景がどこか懐かしい。
多くの建築学徒を魅了する阿佐ヶ谷住宅。
僕は、緩やかにカーブする道路線形にその秘密があるのではないかとかねてより考えていた。
津端のインタビューを読んで長年の疑問が解けた。
「阿佐ヶ谷住宅の設計は、・・・・もう、ほとんどフリーハンドで。
・・・南面平行配置は極力避けようという意識は最初からありましたね。・・・あれも全部フリーハンドですよ。
フリーハンドで、あとから曲線定規を入れながら細かいアールを入れてチェックしていく」
いまなら、コンピューターで設計するのかもしれないが、フリーハンドだったとは。
フリーハンドによる周回道路の線形と住棟配置が心温まる(ハートフルな)風景の演出をしていたのだ。
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阿佐ヶ谷住宅は、いま、再開発(建て替え)の工事が進行中である。
既に建物は取り壊され、昨年末には、遂にランドマークの給水塔も壊された。
あとは、このフリーハンドの周回道路だけを残すのみとなってしまった。
建て替え後のマスタープランの道路計画には、残念ながら、津端が設計したフリーハンドの周回道路は踏襲されない。
これこそが、土地の記憶なのに。
僕は、阿佐ヶ谷住宅の緩やかに曲がった周回道路が大好きだ。
少しずつカーブすることで、歩きながら風景が変化していく。道路が封鎖されるまで、僕は歩き続けるつもりだ。
若きプランナーのロマンを感じながら。
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撮影/えんぞう『阿佐ヶ谷住宅』
出典 三浦 展(編者)『奇跡の団地 阿佐ヶ谷住宅』王国社

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