2017.03.16
十五年ほど前になりますが、あるマンションで漏水事故があって、早朝に被害住戸に駆けつけたことがあります。
お部屋に入れていただいてすぐに、「あ、娘です」ということで紹介された先には、毛足の長い白い猫が座っていました。青みがかった灰色の、美しい目をしていました。
「あ、…こんにちは」と、とりあえず猫に挨拶して、漏水した部屋に向かう途中でもう一匹、別の猫にも遭遇しました。
そのマンションは実はペット禁止だったのですが、たまたま漏水事故があったので、その部屋で猫を飼っていることがわかったのです。
その部屋の方は、猫を「娘」として紹介するほどでしたから、猫と別れ難く、漏水事故解決後引っ越して行かれましたが、こうして部屋の中でこっそりペットを飼っている方は他にもいたようです。
あるとき同じマンションで、モニターを何気なく見ていたら、エレベーターの中からリードを懸命に引っ張って何かを中に入れようとしている人の姿が目に映りました。
リードの先には、足を踏ん張って懸命に中に入るまいとしている、おそらくは閉所恐怖症のブタの姿がありました。
ペットショップに行くと、さまざまなペットが売られています。子ブタも売られていて、小さいときは本当にかわいい姿です。体重も1kg位しかありません。
しかし、すぐに大きくなります。
このとき私が目にしたブタは、推定25kg以上はありました。それでもまだ子どもだったので、大人になれば体重50kgは簡単に超えることが想像できました。
さすがにこれはまずかろうと、お話を聞きに伺ったところ、「小さいときはベランダで遊ばせておこうと思ったんですけど…」。
飼い主の方も、もう力ではかなわなくなってきたことを自覚されていました。
結局このブタは、どこかに引き取られていきました。
私には親戚に獣医がいますが、その人は折に触れてこう言います。
「ペットは商品じゃない。生き物です。最後まで一緒に暮らそうという覚悟のない人には、飼う資格はありません」
きつい言い方に聞こえますが、飼いきれなくなって捨てられたペットの面倒を見つつ、里親を斡旋しているこの獣医の現状が、発言の背景にあります。
最近は「ペット可」のマンションも増えています。
しかし、「ペット可」のマンションであっても、飼い始める前に、相手が大きくなってもずっと一緒にいられるかどうか、ご自分のライフサイクルも含めて慎重に検討をしていただきたいと、動物好きの私としては切に思います。
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