マンション長寿命化促進税制の創設

2023.01.01

あけましておめでとうございます。

本年も何卒よろしくお願いいたします。

 

 

 

~大規模修繕により固定資産税を減額する特例措置~

 

さて、昨年末12月23日にマンションの所有者にとって、画期的なニュースが飛び込んできました。

令和5年度税制改正の大綱に次の内容が盛り込まれました。

 

・一定の要件を満たすマンションにおいて、長寿命化に資する大規模修繕工事が実施された場合に、その翌年度に課される建物部分の固定資産税額を減額する。

・減額割合は、1/6~1/2の範囲内(参酌基準:1/3)で市町村の条例で定める。

 

正式には国会で関連税制法が成立してから施行となりますが、この特例措置の特徴は、

・管理組合が大規模修繕を実施すると、マンションの所有者個人の固定資産税が一年間減額される。

というものです。

所有者個人にメリットを提供することで、マンションの長寿命化への合意形成をしやすくしようという狙いがあるわけですね。

 

ところで、大規模修繕を行うと建物の資産価値が向上するので固定資産税が高くなっても不思議ではないのに、なぜ行政がこのような特例措置を始めようとしているのでしょうか?

そこには次のような背景があります。

 

・築年数の古いマンションでは、高齢化や工事費の急激な上昇により、長寿命化工事に必要な積立金が不足。

・長寿命化工事が適切に行われないと、外壁剥落・廃墟化を招き、周囲への大きな悪影響や除却の行政代執行に伴う多額の行政負担が生じる。

 

国土交通省のプレスリリースには、実際に廃墟化したマンションの写真と「行政代執行費用:約1.2億円」というキャプションが掲載されています。

ただ、1.2億円の除却費用は、比較的小規模なマンションです。

マンションに似た建物として例を挙げると、鬼怒川の廃墟ホテルの撤去費用が一棟10億円以上かかるので自治体が頭を抱えているという報道もありました。

行政は、築年数の古いマンションが次々に廃墟化して、膨大な除却費用が発生することを未然に防ぎたいと考えているのです。

 

そこで、今回の特例措置では、対象となるマンションの要件を次のように定めようとしています。

 

・築後20年以上が経過している10戸以上のマンション

・長寿命化工事を過去に1回以上適切に実施

・長寿命化工事の実施に必要な積立金を確保(積立金を一定以上に引き上げ、「管理計画の認定」を受けていること等 ※地方公共団体の助言・指導を受けて適切に長期修繕計画の見直し等をした場合も対象)

 

要件に「管理計画認定制度」への言及も出てきましたね。

ただ、マンション管理計画認定制度は施行されてから日が浅く、対応できていない自治体もまだ数多くあるので、このあたりの詳細がどうなるかも、今後の焦点となりそうです。

なお、特例措置の対象は、現時点では「令和5年4月1日から令和7年3月31日までの間に完了した長寿命化工事」とされています。

今後の国会の審議にも注目していきましょう。

 

<国土交通省ホームページ 報道発表より抜粋>

報道発表資料 001580048.pdf (mlit.go.jp)

別紙資料 スライド 1 (mlit.go.jp)

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