2022.01.16
「SEIYOいい話コンテスト」の2021年応募作品をご紹介いたします。
当社の管理物件に勤務する管理員の作品です。
「マンションの庭園は社交の場」
私の勤務するマンションには、立派な庭園と、周囲にはたくさんの植え込みがあります。私は1年半前にこのマンションを初めて訪れた時に、その玄関先にイチイの木があるのを目にして、とても嬉しくなりました。私の故郷の実家の庭先にも、これと同じ様なアララギがあったからです。私の田舎では、イチイのことをキャラボクとかアララギと呼びます。まるで実家に帰って来たように感じられたのです。
初めは慣れない仕事で毎日が緊張と失敗との繰り返しでしたが、この庭園の木々が私の心を癒してくれました。春になるとハナミズキ、クルメツツジ、ドウタンツツジ、ヒラドツツジ(大紫)、サツキツツジ、カナメモチなどが花を咲かせます。夏には「庭木の王」モッコク、秋には強い芳香のあるキンモクセイ、冬には冬枯れの景色を明るく彩ってくれるサザンカの花が咲いて、私の心を和ませてくれます。
昨年のある夏の日、私が庭園の除草作業をしていると、居住者のご妊婦様が「暑いから無理をしないでくださいね」と優しいお言葉を掛けてくださいました。おまけに冷たい飲み物もいただいてしまったのです。その飲み物のおいしかったこと!今でも忘れられません。それ以来、庭園で作業をしていると、居住者の皆様からよく声を掛けられるようになりました。勿論私も元気良く挨拶をしております。
また、昨年の秋には、居住者の皆様による植栽の剪定作業がありました。15名による有志の皆様が一所懸命に庭園や植え込みの手入れをしてくださり、見事な出来映えになったことは言うまでもありません。築23年になるこのマンションで初めてのことだったそうです。
ただ、この時に朽ちた木製の古い看板と不要になった支柱が大量に残りました。これを業者に処分依頼をすると、数万円程かかることがわかりました。産業廃棄物扱いになるからです。そこで、当時の管理組合の理事長さんが知恵を出してくださいました。自分はチェンソーを持っているので、細かくしようとおっしゃるのです。そして、後日二人でその作業を行いました。私は以前、林業従事者だったので何とかそれなりにお手伝いすることができたのです。約1日掛かりの作業は大変でしたが楽しいものでした。作業が終了した時は、理事長さんと思わず万歳をしました。案の上、その廃材は可燃ゴミとして処分でき、数万円がゼロになりました。(理事長さんの機械代と手間は入れていませんのであしからず)。
私の田舎にはマンションが無かったので、まだ感覚的によく理解できていないかも知れませんが、住まいの側に庭園や植え込みがあることは素晴らしいと思います。人間と違い、植物は嘘をついたり裏切ったりはしません。世話をすればした分だけの恩を返してくれます。この緑多きマンションで働けることに心から感謝しております。
居住者の皆様が快適な暮らしができるように「管理員」として何ができるのか、日々努力していきたいと思います。これからも常に初心を忘れることなく、この仕事を末長くやっていきたいと願っております。
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